大阪府立成人病センター、高橋先生にセカンドオピニオン的に遺伝子解析をしていただきました。
今日は、解析に至った経緯と解析の結果、今後の展望を書いておきます。
少し長くなるかもしれません。
このブログには何度か書いていますが、
複数の人間で話を聞くことは、自分の命を守る上で重要なポイントだと痛感しています。
ちょっと大げさで過保護なような気もしますが、嫁と一緒に大阪まで行ってきました。
1.GISTERSの情報
今回の経緯にちょっと触れると、
GIST患者のための情報ページで嫁が情報集めをしています。
私もたまに見ています。
ここには掲示板などもあり、患者同士で情報のやり取りをしています。
実は今回の病気に関して、私も医療従事者の親友や製薬会社、保険会社、政治家や地方の有力者、友人などにいろいろと協力を頼んできたのですが、なかなか難しいところがあり、行き着いたのが
患者同士のネットワークでした。
なんだかんだで、やはり病気のときは患者の経験談が強い。
しかもGISTは希少な病気で(10万人に1~2人程度の出現率とも言われています。つまり日本中の患者数が1000人とか2000人の世界です)、他のがんと一緒くたにできない事情があります。
中には医者並みの知識を持つ方などもおり、本当に馬鹿に出来ないネットワークだなぁ、と思いました。
そのGIST患者の掲示板内に嫁が書き込んだところ、多くの励ましの言葉や、治療に関する本当に有益な情報が得られました。
また、嫁のためにみんなで集まってくれたりと、同朋意識、同志意識が強いです。
実は私の知人友人に相談すると、大半は健康食品やサプリメントの話、短絡的に「がんと言ったらここ」「がんなら重粒子でしょ」みたいな話になってしまって、それ自体悪い事ではないのですが、みんなが言っている事が違うし、効果や治療法には個人差があるので、困ってしまいます。
最近はこういう話になると正直「またか」という感じでした。。。みなさん善意でやってくれているので申し訳ないのですが、すみません。
患者ネットワークの話に戻ります。
ネットワーク内の話の中で二人の医師に大変興味を持ちました。
それが、
関東中央病院の小池先生と
大阪府立成人病センターの高橋先生です。
前者は肝臓のラジオ派治療の名医、後者はGISTや肉腫などの研究、解析をしています。
2.受診
ということで、藁をもつかむ思いで、二人の医者にかかるため主治医の国立がんセンターから紹介状を書いてもらいました。
ちなみに、紹介状についても面白いこと、というか、疑問に思う事が多々あるのでまた書きます。
実際には関東中央に一回かかったのですが、「高橋先生の解析を待ってからの方が良い」という小池先生のアドバイスもあり、大阪成人病センターに行きました。
今回の検査の目玉は
1)PET-CT(2回目)
と
2)遺伝子解析(GIST組織から解析)
です。
今回、嫁がGISTになってよく分かった事なのですが、単純に「~がん」と言っても
その遺伝子のタイプで進行が早かったり、悪性度が高かったり、薬が効きやすかったり、放射線が効きやすかったりといろいろな特徴がある、ということ。
そのため、
遺伝子解析をしっかりすると治療方針が決めやすいのです。
しかし、日本の医療では詳細の遺伝子解析は実施していない、もしくは保険適用外のことが多く、GISTの場合もどうやら遺伝子の中でも
エクソン9ないし11に異常があるかどうかの検査のみが保険適用、いわゆるがんセンターでの”
標準治療の一環”とのことでした。
ちなみに、「標準治療」これキーワードですよ。
ちなみに、PET-CTも保険適用外のことも多いです。その場合は10万円かかります。
保険適用の場合、3割負担なので約3万円です。
勉強不足で、保険適用要件はよくわかりません。
PET-CTとは、がん細胞の大好きなブドウ糖の入った放射性薬剤を注射し、CTをとるのですが、がん細胞がある箇所がブドウ糖を取り込んで活性化し、それが放射線で光って見えるので、体のどの部位にがんがあるのか、どの程度の大きさで、どれくらい活性化しているのかが簡単に分かります。
そして遺伝子解析です。
今回、東部病院で針生検(おなかに針をさして肝臓の細胞を取る)をしたのですが、すでに細胞の量が足りずに再度細胞を取ることになるかと思いきや、ナント!?13年前に胃を切ったときの横浜南部病院の細胞(切除しているので大量にあった)がまだ残っていたので、それを取り寄せて使う事に。。。
この手続きは嫁が自分でやったのですが、結構難航しました。
そもそも13年も保管義務が無いので、組織があること自体が奇跡でしたが、現場レベルではその組織や当時の病理組織診断結果を出す事に強い抵抗感があったようです。
まぁ、こちらも当時の治療にはかなり疑問がありますし、告知もまともにされてなかったのではないか、と疑っているので、それを感じ取ったのかもしれません。
が、何とかもらう事が出来ました。
この取り寄せた組織は数週間前に大阪に先に送って解析をお願いして置きました。
嫁は前日に検査を済ませ、私も大阪入りし翌朝の結果報告に備えます。。。
3.遺伝子解析の結果
ちょっと難しい話をします。
自分もよくわかっていないことが多いのですが、GISTでは
c-kit遺伝子の異常もしくは
血小板由来増殖因子受容体(PDGFRA)遺伝子の異常が見られます。
c-kit異常の場合、遺伝子の
エクソン9、11、13、17のいずれかに異常が見られ、このパターンが80~90%。
PDGFRA場合、
エクソン12、14、18の異常が見られ、このパターンで10%程度だそうです。
c-kit異常とPDGFRAの異常が両方おこることはないらしい。
残り5%程度がそのどちらにも異常が無いタイプで、もともとの野生の人間遺伝子から異常(変化)がないことから「
野生型(WILDタイプ)」と言われています。
実は、大阪府立成人病センターにかかったときにはc-kit異常がないことはわかっていました。
先生が機転を利かせてくれて、全結果がわかるより先に連絡をくれたものと思われます。
そこで、投薬でなく、腫瘍切除の物理的療法に切り替えた方がいいのでは?という提案がありました。しかも、切るならラジオの小池先生が良いのではないかと。
後日、連絡が来て、PDGFRAにも異常がなく、WILDタイプであることがわかりました。
薬も放射線も効きにくいんだそうです。
どうも研究の結果からも、嫁が患者会や掲示板を見ている限りでも、若年発症のケースはWILDタイプが多いという、統計データと感覚があります。
嫁も思えば25歳で胃GISTですから、そうかもしれませんね。
ただ、WILDは
病気の進行が遅めである、という特徴や予後が良いという傾向もあるそうです。
嫁は薬が効かないことに対して大きな落胆をしていましたが、まだ次の手があるので、絶対にあきらめません。
ところで遺伝子解析ですが、ここまで調べると保険適用外で実費が8~10万円くらい?かかるそうです。
ところが、大阪府立成人病センターは研究のための基金からその費用負担をしていただける。
もちろん、検査結果は研究データとして提供することになるし、研究成果が出ることを期待しています。(ちなみに、GIST専門の研究というよりは肉腫の研究の模様だが)
数分間のヒアリングアンケート(酒は飲みますか?的な)と今回の費用や趣旨の説明を受けます。
4.今後の展望
グリベックやスーテントは基本的にc-kitやPDGFRAの異常に作用する薬であり、異常のないWILDタイプには効かない。
正確には効きにくいといった方が良いかもしれません。個体差もあるので、効く可能性もある。多くの先生もその可能性があるので、服用をするめることが多いようです。
そのため、残された効果的な治療方法は物理的に腫瘍を切除する、という方法です。
この点、2004年?から
ラジオ波治療が保険適用されるようになり、中でも関東中央病院の小池先生が肝臓ラジオ波の名医と伺い、高橋先生、国立がんセンターから紹介状を書いてもらうことになり、受診に至りました。
今後は、
ラジオ波治療を受け、物理的に腫瘍を焼切ります。
ラジオ波とは、1.5ミリ程度の針のようなものを肝臓の局部に差し、先っちょの電極から電流を流し、100度の熱線で焼切るといったものです。
1回の施術で一般的に3センチ大、3か所程度まで焼切れるそうですが、腕のいい先生ならもっと大きく、そしてもっとたくさんできるそうです。
嫁の場合、最大7センチ弱、数にして5つ腫瘍があるので、1回の施術で終わらないかもしれません。
入院期間は5日から10日程度、あとは出たとこ勝負です。
予後に関しても腫瘍が再発すればその都度ラジオで焼く、というのが主流の治療法になりそうな予感です。
費用は
保険適用で4万円程度、副作用も大きくないし、開腹もいらないので一般的に体にやさしい治療である、と言われています。
ラジオ波の結果などはまた追って報告するようにします。